Jun 01, 2017 絵本コラム

[絵本24]雨の日も楽しくなりそう!

『あめ』
イブ・スパング・オルセン 作
ひだにれいこ 訳
あき書房

6月になると、必ずやってくる梅雨。
時には「梅雨が来ない年があってもいいのに」と
雨が続き、洗濯ものが乾かない日が続いていくと
ついついそんなことを思ってしまいます。

でも、梅雨の季節があるから、
植物たちも野菜たちも育つんですよね。
そんな「雨」にもっと親しめる絵本として
今月は「あめ」という北欧生まれの一冊をご紹介します。

 

著者は、イブ・スパング・オルセンさん。
以前、このコラムで紹介した、『つきのぼうや』と同じ作家さんです。
「国際アンデルセン賞」も受賞した、デンマーク生まれの画家でして、
同郷のアンデルセン童話の挿し絵でも有名です。
偶然ながら先月まで、東京でも作品展が開催されていたそうです。
残念ながら、ぼくはそれには行けませんでしたが・・・。

↑これは帯に書かれた紹介文ですが、うまく雰囲気を伝えています。
「あれれ? このあまつぶさんたち、なんだか人間みたい」とあります。
まるで人間みたいな「あまつぶ」が登場して
「雨」について楽しく教えてくれます。

窓から外を見ていた女の子、シャルロッテ。
彼女の部屋に飛び込んできた、大きな雨粒。
その2つの大きな雨粒が
突然しゃべり始めます。
「やあ、ぼくはあまつぶのパラパラ」
「おいらはポトポト」

この雨粒たちの会話が面白い。
自然をテーマにした絵本って、科学的な説明をするものが多いですが
このオルセンさんは一味違います。
事実とメルヘンをうまく融合して
楽しみながら、雨粒ぼうやの旅を見せてくれるのです。

たとえば、雨が降るのはどんな仕組みなの?
それは、こんな表現で教えてくれます。

雲の上に集まった雨粒坊やたち。
「でっぷりふとって」重さに耐えられなくなり
突然、一気に雲の下に落ちてくる・・・。
頭で一度、その場面を想像してしまうと
いかにも、そんな気がしてきませんか?
そしてまた、これ科学的にも正しいんですよね。

また「雨が降る」という情報についても、
雨粒坊やたちはこう言います。
「ベテランの船乗りさんには まえもって つたえておく」
「たまに テンキヨホウの人にも しらせることがあるかな」と。

こっそりと、漁師さんに耳打ちする雨粒たちを想像すると楽しい。
そして、天気予報が当たらないことがあるのは
「たまに」しか知らせていないからだって。なんか本当にありそう・・・。

読み進んでいくと、
科学とメルヘンが融合した
楽しい「雨粒たちの世界」が見えてきます。

この世界のあちこちで、
いろんなことを引き起こす雨粒たち。
雪になったり、土にもぐったり、
みんなで集まって川をつくってみたり・・・。

ジメジメして、部屋から出たくない雨の日。
窓の外の風景に、「雨粒坊やたち」を想像しながら
ページをめくるのも悪くないかも。
そんなことを思わせてくれる絵本でした。

日々の何気ない暮らしも、想像力があれば、
楽しい景色に変わります。
絵本はまさに、人生を楽しく彩ってくれるBGMのようなもの。
梅雨の重たい空の下、この絵本で楽しく過ごしてみませんか。

Jun 01, 2017 絵本コラム