May 01, 2017 絵本コラム

[絵本23]誰かが誰かを見守っている。

『あかり』
林木林 文
岡田千晶 絵
光村教育図書

今年、2017年の「母の日」は5月14日(日)ですね。
今月ご紹介する絵本は、
「母の日」のプレゼントにもピッタリな
心にひびく、やさしい一冊です。

[絵本]あかり1

それがこの絵本「あかり」です。
やわらかなイラストの表紙はインテリアとしても
やさしくお部屋を彩ってくれるようです。

ページをめくると
一本の「ろうそく」に灯りがともされます

[絵本]あかり2

[絵本]あかり3

生まれたばかりの赤ん坊の女の子。
笑顔で見守っている家族。
そして、ほのかな灯りで照らす一本のろうそく。
女の子のお母さんが
娘の心に「やさしい あかりが ともりますように」と
願って作ったものでした。

そう、このお話の主人公は、
オレンジ色の光を灯す、ろうそくなのです。

[絵本]あかり4

女の子はやがて成長します。
誕生日をむかえるごとに、ろうそくには火が灯されます。
幸せな日を彩る存在として、
女の子と一緒に幸せな時間を過ごすろうそく。

[絵本]あかり5

ろうそくは、寂しい時や
嵐に震える夜にも、そばにいて
あたたかい炎を揺らして、彼女を見守ってくれます。
女の子はだんだんと大きくなり、
ろうそくは、少しずつ少しずつ、小さくなっていくのです。

そして女の子は大人になり、
家を出て新しい家族を迎えます。
ろうそくもまた、一緒に新しい家族を照らし続けます。

そして、時間が過ぎ、ろうそくに最後の火が灯される日が
やってきます。

[絵本]あかり6

1ページ、1ページ、かみしめるように
ゆっくりと絵を眺めながら読んでいくような絵本。
なんといっても素敵なのは、
絵のあたたかさでしょう。

暗がりをやさしく照らす色合いは
見ているだけで、ひきこまれそう。
ずっと見ていたい、そんな気がします。
ちょっぴり哀愁を帯びたストーリーも
心にうるおいを与えてくれる気がします。

そして同時に、自分のお母さんのことを
思い出す人もきっと少なくないはずです。
ろうそくに込められた母の想いは
その娘から、さらに子どもへと
引き継がれていきます。

「きっと、こんなふうに、母は自分を見てくれていたのかなぁ」
そんなことを想いながら
ページをめくりました。

[絵本]あかり7

これは著者からのメッセージですが
「そっと見守ってくれる」「そっと寄り添う」存在として描かれたろうそくは
きっと私たちの母であり、父であり、家族や恋人、友人のことなんだと想うのです。

親が子を想い、子が母を想う。
誰かを想うやさしさ。
そんなあたりまえのありがたさに
ふと気づかせてくれる絵本です。

[絵本]あかり8

これからお母さんになるあの人に。
あなたのお母さんに。
そして、あなた自身に。

この本がきっと、
あたたかい気持ちを届けてくれるでしょう。

May 01, 2017 絵本コラム